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『ぐうぞうさいこう』じょげん
ゼエレン・キェルケゴオル
和辻 哲郎
和辻哲郎『ゼエレン・キェルケゴオル』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『偶像再興』序言、「自然」を深めよ、ある思想家の手紙、生きること作ること、院展遠望、樹の根、偶像崇拝の心理、自己の肯定と否定と、すべての芽を培え、創作の心理について、停車場で感じたこと、転向、霊的本能主義、エレオノラ・デュウゼ、ベエトォフェンの面、「ゼエレン・キェルケゴオル」序。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,567 字 · 212 页
も少し精を出して大作を作り、も少し力を入れてウルサイ世人をばかにしたら吾人は双手に彼を擁したく思う。画かきさんはさらに煩わしい人事の渦中、平然としてボケ花中に眠る心持ちを保たねばならぬ。他人の神経衰弱を癒すにはまず陰気な顔をした患者を自由に操縦せねばならぬ。
西行法師はこの点に一種の解決を与えた男である。一朝浮世のはかなさを悟っては直ちに現世の覊絆を絶ち物質界を超越して山を行き河を渉る。飄然として岫をいずる白雲のごとく東に漂い西に泊す。自然の美に酔いては宇宙に磅たる悲哀を感得し、自然の寂寥に泣いては人の世の虚無を想い来世の華麗に憧憬す。胸に残るただ一つは花の下にて春死なんの願いである。西行はかく超越を極めた。しかれども霊的執着は薄弱である。彼の蹈む人道は誠に責任を無視している。彼の信仰は問わず、彼に空海の才腕と日蓮の熱烈なきはかれの霊的価値を無に近からしむ。わずかに和歌に隠れて詩人を気取るとも「自己」をのみ目的とする彼に何の価値があろう。
かつてはなはだ奇体な旅の僧に逢った事がある。ハンモックと毛布を負うて無人の山奥へ平然として分け入る。阿蘇ではハンモックにぶら下がったまま凍死しようとした、妙義では頂に近き岩窟に一夜を明かした。