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ソヴェトのしばい
ソヴェトの芝居
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年3、4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,289 字 · 53 页
――そうだ。が、全部ではないよ。ソヴェトの劇場は、松竹御儲けのためにあるんじゃない。本当に大衆の楽しみと文化向上の目的をもって建てられている。だから各劇場は毎日、全座席の中の一定数を必ず各職業組合と赤軍(劇場の種類によっては学生)のために、呈供している。半額と無料の切符を出しているのだ。
モスクワのメーデーは、あの賑やかさと、全市に翻る赤旗の有様だけでもほんとに見せたいようだが、次の日の五月二日は休みだ。疲れやすみだね。町々には、まだ昨日の装いものがある。労働者市民は、胸に赤い花飾りなんかつけて、三人四人ずつ散歩している。いくらか、昨日の今日で街が埃っぽいのも、わるくない。昼間はしまっている各劇場の戸口に日に照らされながら札が出ている。「本日、劇場はただ労働者諸君のためにだけ開場する」――職業組合がモスクワじゅうの劇場の切符を労働者に分けるんだ。五月二日、モスクワじゅうの数万人の労働者が、昼間はのんびり散歩して、夜は芝居を観る。これは、小さなことか?
――……あんまり感動させてくれるなよ。――ふだんは、どんなんだろう。いつも労働者の見物で芝居は一杯かい?