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ソヴェトのしばい
ソヴェトの芝居
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年3、4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,289 字 · 53 页
行って見ると、成程ある。狭い入口の外へはみ出るほどの男女がいく重にも列をつくってしずかに順を待っている。普通十日ずつの上演目録が往来などには出ているが、ここではもう十日先のつまり二十日間のプログラムまではり出されている。それを見る時は、嬉しいんだよ。
人込みの間をやっと、のびあがってプログラムを調べ、見たいと思うのを手帳へかきつけ、一時間ばかり列に立った。体の大きいソヴェト市民が標準だから窓口が高い。チビは、そこへのび上ってね、後から急き立てられながら、欲しい劇場の日どりと坐席の列番号をのべたてる。「売れきれです」「それは三階の後から二番目の席しかありません」そんなことでやっと二箇所の切符が買える段になって、窓口の女が云うんだ。「手帳をお出しなさい」自分はわからないのさ、芝居の切符にまさかパンと肉の手帳でもないだろうし。――「どんな手帳です?」「職業組合の手帳ですよ」「私は組合員じゃないんです」「何か手帳はありますか?……でも……」その女は親切なんだ。そう訊いてくれたから、はい、といって出したよ。大日本の外国旅券を!
――パスポートを持って歩いてたのか?