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ソヴェトのしばい

ソヴェトの芝居

宮本 百合子

「改造」1931(昭和6)年3、4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,289 字 · 53 页

青空文庫

を、見物に印象づけようとする熱心さがつよい。(その結果、ここの見物がモスクワの数多い劇場の観客の中で一番、個人的にヒイキをもっている。フットボーリストが、球を抱えて舞台へとび出して来ると、いきなり声がかかる。――スモーリツォフ! スモーリツォフ!)

「蹴球選手」において、「ゴトブ」の連中の爪先で踊る技術からぬけ出られなかったと同時に、このプリマドンナ・ソロイストの個人主義を清算しきれなかった。第三幕目大詰は、ソヴェトの生産の拡大、社会主義の前進、ウラー! ソヴェト市民の日常は一九二九年末、新しい光りで照らされている。それに対する鼓舞の熱い燃え輝く力で観衆を一かたまりに高揚すべき大切な場面だった。それにもかかわらず彼等はそれをどう表現したか? 必要とは全然逆に表現した。――彼等は考えた。大詰だ。ここで、えーと、誰と誰、誰を踊らしてやらなければなるまい。だが、滝のザンザと落ちる前で銀色のヴェールをふって、水の精が踊り、数人の火の精がとびはねるだけのこととなった。自然の可能性を人間の幸福に役立てようとする巨大な意志と計画とその実現であるソヴェト五ヵ年計画とその完成に向って捧げられているソヴェト大衆の団結した努力、意志は、大詰の舞台では表現されず花形舞踊手一人の手でふりまわすヴェールの幅だけに萎縮されてしまった。