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ツルゲーネフのいきかた

ツルゲーネフの生きかた

宮本 百合子

「文化集団」1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,189 字 · 22 页

青空文庫

すると、日頃ツルゲーネフに目をつけていた官憲はその文章が不穏であるという咎で、ツルゲーネフを、ペテルブルグ要塞監獄へいれた。監禁は僅か一ヵ月であった。が、体の弱いツルゲーネフはすっかり打撃をうけ、しかも居住制限によってその後何年か自分の領地スパツコイエに釘づけにされるという不法の拘束をうけたのであった。

やっと自由を恢復してから、ツルゲーネフはドイツやフランスへ遊学した。そして、再びロシアに帰って来はしたが、その時の彼はロシアを自分の生きて、闘って、而して死すべき場処として考えることは出来なくなっていた。貴族でなければ出来ないパリとロシアとの間の往復がはじまった。晩年の十二年間ツルゲーネフはパリから動こうとさえしなかった。二度と外国へふらつき出さぬようなものとして完全にロシアへかえって来たのはツルゲーネフが遺骸となった時であった。

当時のロシア作家としては全く特殊なパリへの半移民的生活をもってツルゲーネフが一生を終るに至った動機は、抑々何であったのであろうか。

ツルゲーネフは、そのことに関し回想記の中でこう書いているそうである。「私は自分の憎むものと同じ空気を呼吸することが出来なかった。