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ツルゲーネフのいきかた

ツルゲーネフの生きかた

宮本 百合子

「文化集団」1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,189 字 · 22 页

青空文庫

ブランデスは、同じ評伝の中で、ツルゲーネフがロシア散文家中最大の芸術家となったと思われた理由をこう云っている。「それは彼等のうちで、彼が一番多く外国に住ったからのことであろう。彼が本国から齎した詩の泉は、永くフランスに滞在したことによって増されはしなかったが、それによって彼の芸術を硝子と額縁とに入れる術を学んだのである」と。

この観察は、ツルゲーネフの生涯とその文学活動を理解するために非常に深く鋭い示唆を含んでいると思う。何故ならば、パリの半移民として獲得したこの術によって、ツルゲーネフは「ルージン」を、「その前夜」を、そして「父と子」、「処女地」などを書いたのであろう。が、全くその同じ原因によって、これらの諸作は当時ロシアの現実に生き、生長しつつあった真面目で急進的な青年男女のタイプを真に描いているものでないという猛烈な反対を各時代の先進分子から蒙ったのであった。

特に有名な「父と子」のバザーロフに対する読者の憤激は深刻なものがあった。ツルゲーネフは、様々に弁明したが、新しい合理的な社会組織を探求する献身的な六〇年代の青年男女の理想と実践とを、一面的な観念的な解釈によって歪め、妙に不自然なものとしてバザーロフの中に鋳かためてしまったのは今日みても否定し難い事実である。