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ツルゲーネフのいきかた
ツルゲーネフの生きかた
宮本 百合子
「文化集団」1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,189 字 · 22 页
という名で、批判したのであった。保守派、反対派は欣喜雀躍してツルゲーネフのそのよびかたを、それから適用するようになった。ツルゲーネフは最も急進的な作品を描こうとして、実際においては反動的効果に陥った。
ところで、こんなにもツルゲーネフの一生にとって重大な意味をもっているパリは、何によって彼をそのように牽きつけ、魅惑したのであろうか? 果して、ツルゲーネフが回想に書いているだけがその全部の理由であったのだろうか。
ここで、我々の前に、パリに住んでいる声楽家でありピアニストであり、作家ルイ・ヴィアルドオの妻であるヴィアルドオ夫人の存在が浮び上って来る。ツルゲーネフは彼より三つ年若いヴィアルドオ夫人が、ペテルブルグへ演奏旅行に来たとき知り合いとなった。このヴィアルドオ夫人こそ、「彼の半生以上をその傍に根つけにしてしまった」魅力の根源なのであった。既に一八四八年、三十歳のツルゲーネフは家庭の友としてヴィアルドオ夫妻とヨーロッパ旅行をやっている。その前年、ツルゲーネフに少年時代から沁々農奴生活の悲惨を感じさせた専横な女地主である母親が、外国で日を暮しているツルゲーネフに立腹して送金を拒絶した時、彼を助けて金を出してやったのは、ヴィアルドオ夫人である。