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トコヨゴヨミ
トコヨゴヨミ
田山 花袋
「早稲田文学」1914(大正3)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,449 字 · 38 页
しかし、半年と経たない中に、確かな計算だと堅く信じていた数字が数字通りになって行かないのを勇吉はだんだん発見した。一年間に規定された荒蕪地を完全に開墾するには猶多くの金と力とを要した。天然と戦うのについて思いもかけない障碍が沢山に一方にあると共に、日雇取達は何の彼のと言っては怠けて遊んだ。開墾が出来て貸した方の土地には、小作人は菜種などを蒔いたが、それも十分な収穫を得ることが出来なかった。薬の方で儲けた金は段々土地の方にすい取られて行った。勇吉は鉛筆で数字を書いた帳面の上に、髪の延びた蒼白い顔を落して、屈託そうに何か考えていることなどがよくあった。
しかし、計算が合わないでも、天候さえ十分ならば、かれの計画は段々成功して行くであろうと思われた。「なアに、そう心配したものではない。三年も経てば余程目鼻が明いて来まさ。」こう年を取った近所の百姓は言って呉れた。ところが不仕合せにも二年目は天候は好い方ではなかった。菜種も、豆類も、粟もすっかり駄目だった。百姓はこぼしながら馬鈴薯や玉蜀黍などを食った。今年こそ、今年こそと言って、昨年の凶作の取りかえしをしようとした今年は、また昨年以上に天候がわるかった。