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ニューフェイス
ニューフェイス
「小説と読物 第三巻第七号」桜菊書院、1948(昭和23)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,479 字 · 25 页
三人の旦那の蒼ざめはてた顔を見れば、忽ち思い当ることがある。金切声の声楽に亡国の悲劇を読みとる三人の旦那であった。その御三方の登場を合図に唐突と亡国の悲歌をかなでる、もとよりそこにはさゝの枝主人の指図があるにきまっている。
そこで千鳥波は物をも言わず猛然と襲いかゝってソプラノ嬢をぶらさげて奥の座敷へ運びこみ、パチパチパチと二十ばかりひッぱたく。六尺三十貫の巨漢だから、意識して力をぬいているけれども、頭は一時にボウとかすんで、ソプラノ嬢はフラ/\とのびてしまった。その髪の毛をにぎり、片手に女のアゴをおさえて、グイと顔をひきよせて、
「キサマ、シン公の指図をうけて、よくもスパイにきやがった。あそこにいらっしゃる三人の旦那方は、金切声のソプラノてえのが、何よりキライのお方なんだ。そのソプラノがキライのあまりに、広い世間を狭く渡っていらっしゃる。ラジオのソプラノがあるばっかりに、日本の道路を敵地のように心細く歩いていらっしゃるのだぞ。この店にラジオがないのも、大事な旦那方に義理をたてるワタシの志なんだ。その旦那方のおいでを見すまして金切声をはりあげるとは、とんでもない悪党女め。