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パァル・バックのさくふうそのた
パァル・バックの作風その他
宮本 百合子
「婦人文芸」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,395 字 · 9 页
外国人によって細かく観察された描写という以上の血縁的なものがある。
「お菊さん」を書いた、ピエール・ロチの筆致は実に細かで敏感で、長崎の蝉の声、夏の祭日の夜の賑い、夜店の通りを花と一緒に人力車に乗って来るお菊の姿の描写などは、日本人では或はああいう風な色彩的な雰囲気では書けないであろう日本的なものを活々と描出している。だが、ロチの観察には、冷やかさ、距離、知的な好奇心、そういうものが漲っている。そういう意味での客観的態度が貫いている。
バックは、そこで生れた場所に対する自然な、充実した知識、観察で描いているばかりでなく、独特な愛情が感じられるのである。バックは、阿蘭達の生活からずっと離れたところにいるからそれが見えて書けているのではなく、ほんとに身のまわりに、自分がその中にいて生活を感じている、それを、彼女のヨーロッパ的な教養の力、理性の力で語っているその点で、バックが中国生れのアメリカ婦人であるという特別な事情が大きいプラスとなって作用しているのである。何故なら、阿蘭の生涯を阿蘭は自分で書くだけの文化的な力は与えられていないのであるから。バックはアメリカに生れて育ったアメリカの婦人と比べれば、随分違ったいろいろのものを女としてその心の内部にもっているに違いない。