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パァル・バックのさくふうそのた
パァル・バックの作風その他
宮本 百合子
「婦人文芸」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,395 字 · 9 页
日本が中国と地理的には全く近く、過去の文学的伝統の中に、あれ程深く中国文学の影響を受けながら、現代の中国の人民の生活をそれを描こうとして描いている作家は殆どないといってよい。婦人作家には全くないと云えるのではあるまいか。日本の社会的な事情は、バックのような中国におけるヨーロッパ第二世の婦人を生む条件も持たないこともあるが、一つには、明治以来日本が中国との関係においては、中国の一般人民としての日常生活の利害の上には立たず、常にその反対物としての権力関係にあったので、その微妙な反映が文学の面にもあらわれているのであろう。将来の日本の文学の豊富性のなかには、こういう未開発の分野での開花も眺めわたされる訳である。
バックの作風から拡る連想の一つとして、やや一般的な作家の態度についての話題であるが、この間、読売新聞の座談会で、数人の婦人作家があつまり、いろいろ話が弾んだ。終りに近く、作家の書く態度の一つとして、私は自分が現実に対して人情に堕せず、非人情に描いて行く力を欲しているという意味のことを云った。同座していられた宇野千代さんが、それに賛成され、本当にそうしたら亭主のことでも悪く書けていい、という意味のことを云われ、私はその時大変困った。