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ヒューマニズムのしょそう

ヒューマニズムの諸相

宮本 百合子

「雑記帳」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,603 字 · 6 页

青空文庫

中国に於ては、ヒューマニズムの運動は、その国の置かれている事情に従って、民族自立の問題と結びついている。先頃亡くなった中華のゴーリキイと言われた作家魯迅の存在は、全く以上のような特殊な国情を反映していた。

さて、では日本に於けるヒューマニズムはどういう展望の下に置かれているであろうか。非常に複雑なものがある。第一日本では政治上の人民戦線が結ばれるに困難な事情があり、文化的な面から見ても、ヒューマニズムを提唱している人々自身の中に、左翼的なものを排する気分、その気分の合理化としてヒューマニズムが取上げられた傾向もあった。ヒューマニズムに於ける現実的な発展の方向をある意味では意識的にぼやかしていることは、日本に於てヒューマニズムが一つの指導的な新しい文芸思潮として高まり得ない弱点となっているのである。ファシズムに賛成しないというだけのところに限度を置いてそこに居据っていたのでは、今日の文化を進歩的な方向に進める思潮とはなり難い。更にそれから先、ではどうするかという問題が示唆されなければならない。日本の現実に即してリアリスティックに生活と芸術とに対する一般的態度としてこの示唆が必要なのである。