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ヒルミふじんのれいぞうかばん
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
海野 十三
「科学ペン」三省堂、1937(昭和12)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,412 字 · 29 页
近世の整形外科学は、ヒルミ夫人の手によってすっかり書きかえられてしまったんですよ。どんなに書きかえられたか、それもご存知ないのですか。これからお話してゆくうちに、ひとりでに分ってきましょうが、なにしろここ五ヶ年のヒルミ夫人の努力で、普通にゆけば五十年は充分かかるという進歩をやり上げてしまったのですからネ。まあ政治的文句はそれくらいにして、事実談にうつりましょう。ちょっと事実とは信じられないほどの奇怪なる事件なんですよ」
と、若い男はポツリポツリと語りだした。――
斯界の最高権威となったヒルミ夫人は、一昨年ついに結婚生活に入った。
その三国一の花婿さまは、夫人より五つ下の二十五になる若い男だった。それは或る絹織物の出る北方の町に知られた金持の三男だといいふらされていた。誰もそれを信じている。ところがそれは真赤な偽りなのだ。それを証拠だてるのに甚だ都合のよい話がある。ほんの短いエピソードなのだが。
それは一昨年の冬二月のことだった。
或る下町で、物凄い斬込み騒ぎがあった。
双方ともに死傷十数名という激しいものだったが、その外に、運わるく側杖をくって斬り倒された「モニカの千太郎」