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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

――(前題――楊弓)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 页

青空文庫

……挫げたって惜くはないわ、薄黒くなった麦稈帽子を枕にして、黒い洋服でさ。」

「妙な天狗だね。」

「お聞きなさいよ。何とかウイスキイてんでしょう。壜をさ、――余り清潔じゃあない手巾に載せたまんまで、……仰向いてその鼻が、鼻が、ほほほ。」

「鼻が。」

多津吉は真面目で聞く。

「隆くない、ほほほ、ちょっと撮んでやろうかしら、なんと思って上から顔を視ると、睡っていたんじゃないんです。円くて渋面の親仁様が、団栗目をぎろぎろと遣って、(狐か――俺は天狗だぞ、可恐いぞ。)と云うから、(可恐いもんですか。)ってそう云うと、(成程、化もの夥間だ、わはは。)大な声なの。老人の癖に、カラカラしたものよ。どっこいしょなら親仁相応なのに、(やあ、)と学生さんのような若い掛声で、むくりと起きた処が、脊の低い、はち切れそうな緊った身体さ。

あなた――どうでしょう、天狗様の方が股が裂けそうな大胡坐で、ずしんと、その松の幹へよりかかると、大袈裟な胡坐ッたら。あれなんですよ。むこうの、あの四角いような白い丘が、お尻の響でぶるぶると揺れるようなの。」

城下の果に霧を展いて、銀線の揺れつつ光る海の上に、紅日、山の端の松を沈むこと二三寸。