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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

――(前題――楊弓)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 页

青空文庫

「せめて、移り香を。」

「厭味たらしい、およしなさい、柄にもない。……じゃあ私も気障をしてよ。」

するりと簪を抜くと、ひらひらの薄が、光る鞠のように、袖と袂と重った上へ、鬢の香を誘って落ちた。

「しばらくそうしていらっしゃい。――離れないお禁厭よ。」

「竜胆以上に嬉しいなあ。」

と、寂しそうに笑った。

「御挨拶だわね。――狐の尻尾よ。その実は。……暗くなったらひらひら燃えるかも知れませんよ。

いえね、狐火でも欲しいほど、洋燈がしょんぼり点いたばかり、それも油煙に燻って、近常さんの内はまた真暗になりました。……お正月がそれなんですもの。霜枯の二月をお察しなさい。お年よりは台所で寒の中の水仕事、乏しいお膳の跡片づけ、それも、夜のもう八時すぎ九時ぐらい。近常さんは、ほかに身の置場所のない仕事場で、さあ、こうなると酷いものです。……がら落の相場師は、侠気はあっても苦しい余りに、そちこち、玉子の黄味ぐらいまで形のついた。……」

ふと黙って、

「待って下さい、形は似ていますけれどもね、いま玉子を言っては不可い。ここへ、またお使者が飛んで来て、鶏の因縁になるんですから。