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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

――(前題――楊弓)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 页

青空文庫

一県二三ヶ国を代表して大博覧会へ出品をしようという、俺の作に向って、汝の銘を入れる法があるか。退れ、推参な、無礼千万。これ、悪く取れば仕事を盗む、盗賊も同然だぞ。余りの大ものに見驚きして、気が違いかけたものであろう。しかし、詫びるとあれば仔細ない。一杯たらそう。)いやな言だわね、この土地じゃあ、目下に、ものを馳走などする事を(たらす)ッて言うんですって、(さ、さ、さ、皆、膳につけ、膳につけ。)(いや、あの状でも名誉心があるかなあ。活きとるわけだ。)と毛の長い若旦那は、一番に膳について、焼ものの大鯛から横むしりにむしりかけて、(やあ、素晴しい鯛だなあ。)場違ですもの、安いんだわ。

沈み切っていた、職人頭の富さんが、運八に推遣られて坐に返ると、一同も、お神輿の警護が解けたように、飲みがまえで、ずらりとお並びさ、貴方。

近常さんは、驚いたのと、口惜いのと、落胆したのと、ただ何よりも恥かしさに、鏨と鉄鎚を持ったなりで……そうでしょうね――俯向いていなさいましたって、もうね、半分は、気もぼうとしたんでしょうのに、運八の方では、まだそうでもない、隙を見て飛ついて、一鏨、――そこへ掛けては手錬だから――一息に銘を入れはしまいかと、袴の膝に、拳を握って睨んでいる。