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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

――(前題――楊弓)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 页

青空文庫

そこへ――振袖の女が、上の丘へ、帯から上、胸を半身でくっきりと美しく出た。山では、ちっとでも高い処が、遠いように見え、また思いのほか近く見える。霧も薄し、こちらからは吃驚するほど、大きく見た、が、澄切った藍色の空を遥に来たように、その胸から上半分の娘の方は、さも深そうに下の墓を覗いて、帽子を転がして、ぼんやりうつむいている多津吉を打撞ったように見ると、眉はきりりとしたが優しい目を、驚いた様にりながら、後退りになって隠れたが。

しばらくすると、そっと、うしろから、わざと足数を拾って、半ば輪を描いて近いた。上からすぐ男の居る処へ道はあるが、その阪下りに来たのではない。丘の向う裏から廻って、開いた平場を寄ったのである。

「旦那。……」

旦那と、……肩越に低く呼んだが、二声とも呼ばせず、男は直ぐに振向いた。女の近寄るのを、まんざら知らないのではなかったらしい。

だから、女も、ものが言いよかったろう、もう、莞爾して、

「何をしていらっしゃるの。」

下品な唄を、高調子で繰返す稼ぎのせいか、またうまれつきの声調か、幅があって、そして掠れた声が、気さくな中に、寂しさが含まれる、あわれも、情も籠って聞こえた。