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ベルリンだいがく

ベルリン大学

寺田 寅彦

「輻射 第一号」東京帝国大学理学部学生、1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,073 字 · 14 页

青空文庫

純真な性格にもよるであろうが、しかし一方で誰にも負けないだけの長所をもち、そうしてそれを自覚している人でなければこれほど無邪気にはなれまいと思ったことであった。後年アインシュタインに対する反ユダヤ人運動でひどく器量を悪くしたゲールケはやはり一座の中でいちばん世間人らしいところがあった。若くて禿頭の大坊主で、いつも大きな葉巻を銜えて呑気そうに反りかえって黙っていたのはプリングスハイムであった。イグナトフスキーとかいうポーランド人らしい黒髪黒髯の若い学者が、いつか何かのディスクシオンでひどく興奮して今にも相手につかみかかるかと思われてはらはらしたことがあった。ワールブルヒは腎臓でもわるいかと思われるように顔色が悪く肥大していて一向に元気がなかったが、ゴールトシュタインは高年にかかわらず顔色も若々しく明るい上品な感じのする人であった。プランクはこの人に対していつもわざとらしからぬ敬意を表しているように見受けられた。

物理の輪講会にはやはりまた特別の雰囲気があるのを面白いと思った。自分の出席した四つのコロキウムのそれぞれの雰囲気は学科の性質から来る特徴もあるにはあるであろうが結局はその集会を統率する中心人物の人柄そのものによって濃厚に色づけられているのであった。