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ボニンとうものがたり
ボニン島物語
久生 十蘭
「文藝春秋」1954(昭和29)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,772 字 · 41 页
「ひとつ、貧乏話を聞いてもらいたい。七年前に俸給四分の一の借上げ……その頃はまだよかったが、七年の飢饉のあとから面扶持になった。一人扶持といえば米五合だが、時節柄とあって、二合に切り下げ、貴賤平等に毎日、一人に白米二合、ほかに、味噌代、薪代として、二十文ずつ貰う。千石取も二合なら、百石取も二合……朝々、支配のところへ出掛けて行く。キッチリと量って、渡したぞ、頂戴しましたで帰ってくる。モノがあればいいほうで、三日に一度はまだ御配がない。そっちでなんとかしてくれということになる……貰うのは米でも、米を食っているのは、一人もいない。雑穀屋へ持って行って、粟か稗にかえてくる。そうでもしなければ間がもてぬ。思うことは、ただ食いたいということだけ……これがわれわれの境界だ。あっちら稗や糠飯を食わしておいて、人を斬ってもすさまじい。田中ではないが、腹でも切って死んでやりたくなるではないか……どうだろう、清兵衛さん、ねがいをかなえてはくれまいか。わしは、いささか本草と物産に眼があいているから、そのほうの助ッ人をやる。ご迷惑はかけないつもりだ」
清兵衛は手を振って、