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かぜのまたさぶろう

ポラーノの広場

宮沢 賢治

宮沢賢治『ポラーノの広場』。同一底本的分册已合并为一书。收入:風野又三郎、タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった、ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記、若い木霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 67,062 字 · 135 页

青空文庫

却ってそのつやつやした緑色の葉の上に次々せわしくあらわれては又消えて行く紫色のあやしい文字を読みました。

「はるだ、はるだ、はるの日がきた、」字は一つずつ生きて息をついて、消えてはあらわれ、あらわれては又消えました。

「そらでも、つちでも、くさのうえでもいちめんいちめん、ももいろの火がもえている。」

若い木霊ははげしく鳴る胸を弾けさせまいと堅く堅く押えながら急いで又歩き出しました。

右の方の象の頭のかたちをした灌木の丘からだらだら下りになった低いところを一寸越しますと、又窪地がありました。

木霊はまっすぐに降りて行きました。太陽は今越えて来た丘のきらきらの枯草の向うにかかりそのななめなひかりを受けて早くも一本の桜草が咲いていました。若い木霊はからだをかがめてよく見ました。まことにそれは蛙のことばの鴾の火のようにひかってゆらいで見えたからです。桜草はその靭やかな緑色の軸をしずかにゆすりながらひとの聞いているのも知らないで斯うひとりごとを云っていました。

「お日さんは丘の髪毛の向うの方へ沈んで行ってまたのぼる。

そして沈んでまたのぼる。空はもうすっかり鴾の火になった。