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かぜのまたさぶろう

ポラーノの広場

宮沢 賢治

宮沢賢治『ポラーノの広場』。同一底本的分册已合并为一书。收入:風野又三郎、タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった、ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記、若い木霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 67,062 字 · 135 页

青空文庫

その辺の寒さなら北極とくらべたってそんなに違やしない。その時僕たちはどうしても北の方に行かなきゃいけないようになるんだ。うしろの方では

『ああ今度はいよいよ、かけるんだな。南極はここから八千七百ベェスターだねえ、ずいぶん遠いねえ』なんて云っている、僕たちもふり向いて、ああそうですね、もうお別れです、僕たちはこれから北極へ行くんです、ほんの一寸の間でしたね、ご一緒したのも、じゃさよならって云うんだよ。もうそう云ってしまうかしまわないうち僕たち北極行きの方はどんどんどんどん走り出しているんだ。咽喉もかわき息もつかずまるで矢のようにどんどんどんどんかける。それでも少しも疲れぁしない、ただ北極へ北極へとみんな一生けん命なんだ。下の方はまっ白な雲になっていることもあれば海か陸かただ蒼黝く見えることもある、昼はお日さまの下を夜はお星さまたちの下をどんどんどんどんかけて行くんだ。ほんとうにもう休みなしでかけるんだ。

ところがだんだん進んで行くうちに僕たちは何だかお互の間が狭くなったような気がして前はひとりで広い場所をとって手だけつなぎ合ってかけて居たのが今度は何だかとなりの人のマントとぶっつかったり、手だって前のようにのばして居られなくなって縮まるんだろう。