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マクシム・ゴーリキイのでんき

マクシム・ゴーリキイの伝記

宮本 百合子

幼年時代・少年時代・青年時代

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页

青空文庫

それでいて、彼の中には何となく人と違ったところがあった。それは昔の「結構さん」の中にあったものとどこか似ている。彼は自分でも自分の特質をよく知り抜いており、また人々に理解して貰えないということを、ちゃんと弁えていた。この男の言葉づかいには一つの癖があり、他人なら善いとか悪いとか、拙いとかいうところを、ヤコヴは大概、興味がある、面白い、珍しいという云い方で表現した。この男がゴーリキイに初めてカルタの勝負を教えた。そして、忽ちゴーリキイが負けた金の半額、ジャケツ、長靴などをかえして云った。

「遊びだよ、これは遊びだよ。楽しみだよ。それだのにお前はまるで喧嘩腰で来る。喧嘩だってやたらむきになったんじゃ駄目だ。一度しくじってもいい。五度しくじってもいい。七度でもいい――それが何だ! 止すさ。引込むだけのことさ。そして、冷めきってからまたやるんだ! それが遊びだ」

ゴーリキイには益々この男が気に入り、彼の話しぶりは、輝やかしい祖母さんの物語を連想させる程である。しかし、どうしてもこの男には気に入らぬところがあった。それは人々に対する深刻な冷淡さ、これが断然ゴーリキイの性分に合わぬ。