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マクシム・ゴーリキイのでんき

マクシム・ゴーリキイの伝記

宮本 百合子

幼年時代・少年時代・青年時代

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页

青空文庫

「どうしたね、若い衆、道でもないところから来てよ!」

するとマクシムはアクリーナの前に跪いて云った。

「アクリーナ・イワーノウナ。俺達を助けて下さい。俺達は結婚したいんだ」

ワルワーラはと見れば、自分の手にある籠の夷苺のように体じゅう真赤にして、庭の林檎の樹蔭にかくれながら、マクシムに何か合図しながら、眼には涙があふれそうになっている。

「私たちはもう、とうに結婚しました。私たちは只婚礼をしなくちゃならないの」

「ワシリー・ワシリーエフが俺にワーリャを呉れねえことはわかっている。だから、俺はあの娘を盗みます。唯お前は俺たちを助けて下さい。石で打ってもいい。どっちみち俺はゆずらない」

ひっくり返るほどたまげながら、「こうなりゃ、ほかになんとしよう」アクリーナは「マクシムの額とワルワーラの編髪に祝福した」

若い者たちはアクリーナの思いやりのある才覚で、こっそり教会で婚礼の式をあげることが出来たのであった。が、ヴォルガの曳舟人足から稼ぎためて、今は九年間も改選なしの職人組合長老にまでなっているワシリー・カシーリンにとって、謂わば渡り職人のようなマクシムに一人娘を呉れてやることなど我慢出来るものではない。