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モンアサクサ

モンアサクサ

坂口 安吾

「ナイト 創刊号」ナイト、1948(昭和23)年1月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,629 字 · 10 页

青空文庫

横のものをタテにもせず、身の廻りの何から何まで、弟子にやらせて、アゴで使っているのが、まことに酒の肴に面白くて仕方がない。役者の世界ぐらい封建的なところはない。浅草にして、そうなのである。

私は浅草へでかけると、もっぱら淀橋太郎をひっぱりだして、一しょに飲む。むかしは軽演劇の脚本家だが、ちかごろは立身出世して、興行師だそうで、ちゃんと甲斐性ある女房も貰い、実業家ともなれば、朝も早朝よりお目々をさまして、私が先日八時ごろ門を叩いたら、ちゃんと目を覚していた、というグアイである。

浅草の飲み屋にいると、興行師とか、一座を組織してドサ廻りにでようとか、そういう相談をしている何組かゞ隣席にいて、これが面白いものである。

漫才だか浪花節だか、和服姿の芸人が、レビュウ子らしい姐さんを口説いている。九州は長崎の五島というところへ、興行に誘っているのである。

長崎から船でちょッとで、目下景色のよろしい土地だからと、口説いている。レビュウの姐さんは、長崎も五島も、てんで日本地図は御存知ない様子で、そんなことなんでもないや、と気にとめるところがミジンもないから、面白い。