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ヤトラカン・サミはかせのいす
ヤトラカン・サミ博士の椅子
牧 逸馬
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,010 字 · 26 页
態度の優美は「大いそぎの文明国」でよりも、かえってこの「怠慢な東洋」で完全に実行されている。で、みんな静かに、しずかに動き回ること――うんぬん。
と、これらのすべては、前提旅行会社が白い人々に対して発している心得やらお願いやらだが、そこで、欧羅巴の旅行団は、このことごとくを承知したうえで、せいろんへ、せいろんへ、せいろんへ、すうつ・けいすの急湍が、かあき色膝きりずぼんの大行列が、パス・ポートが、旅人用手形帳が、もう一度、せいろんへ、せいろんへ、せいろんへ――無作法な笑い声のあいだから妖異な諸国語を泡立たせて、みんなひとまず、首府コロンボ港で欧羅巴からの船を捨てた。
すると、同市マカラム街の珈琲店キャフェ・バンダラウェラでは、タミル族の女給どもを多量に用意して、この「旦那」方の来潮に備えていたのだ。
多美児族の女たちは昼は、暗い土間の奥から行人に笑いかけたり、生薑水をささげてテーブルへ接近したり、首飾りを手製するために外国貨幣をあつめたりした。そして、夜は、籐駕籠に揺られて英吉利旦那のもとへ通ったり、ひまな晩は、馬来竹で笊を編んで、土人市場のアブドの雑貨店へ売り出した。