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ヨーロッパてきせいかく ニッポンてきせいかく

ヨーロッパ的性格 ニッポン的性格

坂口 安吾

「歴史小説 創刊号、第一巻第二号」1948(昭和23)年10月1日、11月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,123 字 · 33 页

青空文庫

或いは自分を仲間だと思っていたのか、自分が這入っていっても手向いする者がなかったのか。それだからと云って、寝ている者もなかったし、気を配ってみたけれども鼠一匹すらも姿を見せなかった。せめて二、三人でもと思ったが、おどり出して抵抗して来る者もなかった。そもそも抵抗というものを何ひとつ感じることなく、信長の寝所へゆきついたのであった」――

こんな風なことが誌されております。

この一例でも分って頂けると思うのでありますが、すこしも他に煩わされることがなく、自分自身の体験そのものを、明確に書き上げた日本人の手記というものは、滅多にないのであります。これなどは実に特別な、特殊の例なのでありまして、殆んど、いや全ての者は、物事の本態を見るということを忘れているのであります。いつでも他人の思惑が考えられていまして、独立の個人の自由な考えとか、観察方法とかは許されていないし、許されなければブチ破ってやろうという人物はいなかったのであります。ニッポン人にとっては、毎時でも、もっと一般的な、嘘があってもかまわぬから一般的でさえあればいいというような調子がお得意なのでありまして、相も変らず、ハッタとにらんだとか、烈火のごとく憤ったとかいう云い方、そういう方式、どうにでもなるというような一般的な観察で片づけてしまおうとする考え方