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ルルとミミ
ルルとミミ
とだ けん
「九州日報」1926(大正15)年3~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,628 字 · 24 页
湖の面には牛乳のような朝靄が棚引きかけていました。その上から、まだ誰も起きていないらしい、なつかしい故郷の村が見えました。その村のお寺の鐘撞き堂に小さく小さくかすかにかすかに光る鐘……ルルはそれをジッと見つめていましたが、その眼からどうしたわけか涙がポトポトとしたたり落ちました。
「まあ。お兄さま、どうなすったの。なぜお泣きになるの……」
ルルはしずかにふりかえりました。
「ミミや。お前は村に帰ったら、一番に何をしようと思っているの……」
「それはもう……何より先にあの鐘の音をききたいと思いますわ。あの鐘は今度こそきっと鳴るに違いないのですから……どんなにかいい音でしょう……」
と、ミミはもう、ルルの顔をあおぎながら、その音が聞こえるようにため息をしました。ルルも一所にため息をしました。
「ミミや。そうしてあの鐘が鳴ったなら、村の人はきっと私たちを可愛がって、二度と再び湖の底へはゆけないようにしてしまうだろうねえ」
「まあ。お兄様はそれじゃ、湖の底へお帰りになりたいと思っていらっしゃるの……」
ルルはうなずいて、又一つため息をしました。そうして又も涙をハラハラと落しました。