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ウィタ・セクスアリス

ヰタ・セクスアリス

森 鴎外

「昴」1909(明治42)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页

青空文庫

、第4水準2-78-60)麻に出す。

「何故拭くのだ」

「だって失礼ですから」

「榛野でなくっては、拭かないのは飲まして貰えないのだね」

「あら、榛野さんにだっていつでも拭いて上げまさあ」

「そうかね。拭いて上げるかね」

こんな風な会話である。詞が二様の意義を有している。※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)麻は僕がその第二の意義に対して、何等の想像をも画き得るものとは認めていない。女も僕をば空気の如くに取り扱っている。しかし僕には少しの不平も起らない。僕はこの女は嫌であった。それだから物なんぞを言って貰いたくはなかった。

※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)麻が楊弓を引いて見ないかと云ったが、僕は嫌だと云った。

※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)麻は間もなく楊弓店を出た。それから猿若町を通って、橋場の渡を渡って、向島のお邸に帰った。

同じ頃の事であった。家従達の仲間に、銀林と云う針医がいて、折々彼等の詰所に来て話していた。これはお上のお療治に来るので、お国ものではない。江戸児である。家従は大抵三十代の男であるのに、この男は四十を越していた。