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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
お父様は或る省の判任官になっておられた。僕はお父様に寄宿舎の事を話した。定めてお父様はびっくりなさるだろうと思うと、少しもびっくりなさらない。
「うむ。そんな奴がおる。これからは気を附けんと行かん」
こう云って平気でおられる。そこで僕は、これも嘗めなければならない辛酸の一つであったということを悟った。
*
十三になった。
去年お母様がお国からお出になった。
今年の初に、今まで学んでいた独逸語を廃めて、東京英語学校にはいった。これは文部省の学制が代ったのと、僕が哲学を遣りたいというので、お父様にねだったとの為めである。東京へ出てから少しの間独逸語を遣ったのを無駄骨を折ったように思ったが、後になってから大分益に立った。
僕は寄宿舎ずまいになった。生徒は十六七位なのが極若いので、多くは二十代である。服装は殆ど皆小倉の袴に紺足袋である。袖は肩の辺までたくし上げていないと、惰弱だといわれる。
寄宿舎には貸本屋の出入が許してある。僕は貸本屋の常得意であった。馬琴を読む。京伝を読む。人が春水を借りて読んでいるので、又借をして読むこともある。自分が梅暦の丹治郎のようであって、お蝶のような娘に慕われたら、愉快だろうというような心持が、始てこの頃萌した。