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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
「そんな処へ君はひとりで行けるか」
「ひとりじゃあない。君と行こうというのだ」
「そりゃあ分かっている。僕がひとりというのは、大きい人に連れられずに行けるかというのだ。一体君はもう行ったことがあるのか」
「うむ。ある。此間行って見たのだ」
埴生は頗る得意である。二人は暖簾を潜った。「いらっしゃい」と一人の女中が云って、僕等を見て、今一人の女中と目引き袖引き笑っている。僕は間が悪くて引き返したくなったが、埴生がずんずん這入るので、しかたなしに附いて這入った。
埴生は料理を誂える。酒を誂える。君は酒が飲めるかというと、飲まなくても誂えるものだという。女中は物を運んで来る度に、暫く笑いながら立って見ている。僕は堅くなって、口取か何かを食っていると、埴生がこんな話をし出した。
「昨日は実に愉快だったよ」
「何だ」
「おじの年賀に呼ばれて行ったのだ。そうすると、芸者やお酌が大勢来ていて、まだ外のお客が集まらないので、遊んでいた。そのうちのお酌が一人、僕に一しょに行って庭を見せてくれろと云うだろう。僕はそいつを連れて庭へ行った。池の縁を廻って築山の処へ行くと、黙って僕の手を握るのだ。