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ウィタ・セクスアリス

ヰタ・セクスアリス

森 鴎外

「昴」1909(明治42)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页

青空文庫

「いや。君の言うことは一々尤だ。しかしそんな話は、戦国の人君に礼楽を起せというようなものだねえ」

「そうかねえ。新聞社なんというものは存外分らない人が寄っているものと見えるねえ」

「いやはや。これは御挨拶だ。あははははは」

こんな話をして霽波は帰った。僕は霽波が帰るとすぐに机に向って、新聞の二段ばかりの物を書いて、郵便で出した。こんな物を書くに、推敲も何もいらないというような高慢も、多少無いことは無かった。

翌日それを第一面に載せた新聞が届く。夜になって届いた原稿であるから、余程の繰合せをしてくれたものだということは、僕は後に聞いた。霽波の礼状が添えてある。

この新聞は今でもどこかにしまってある筈だが、今出して見ようと思っても、一寸見附からない。何でも余程変なものを書いたように記憶している。頭も尻尾もないような物だった。その頃は新聞に雑録というものがあった。朝野新聞は成島柳北先生の雑録で売れたものだ。真面目な考証に洒落が交る。論の奇抜を心掛ける。句の警束を覗う。どうかするとその警句が人口に膾炙したものだ。その頃僕は某教授に借りて、Eckstein の書いた feuilleton の歴史を読んでいたので、先ず雑録の体裁で、西洋の feuilleton の趣味を加えたものと思って書いて見たのだ。