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ヴァリエテ

ヴァリエテ

宮本 百合子

「改造」1928(昭和3)年1月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,156 字 · 11 页

青空文庫

佳一はびっくりして身をひらいた。

「――近藤さん、どこいくの」

佳一は、二度びっくりで、女の児の顔を見た。

「なーんだ。楓ちゃんか! びっくりしちゃった」

楓は、早速佳一に手をひかせてあるきながら、また、

「ね、どこいくのよ」

ときいた。

「さあどこへ行こうか……楓ちゃんはどこへいらしたの?」

「歯医者へいったの」

「そいで、アーン、アーン泣いたんでしょう? 電車の中まで聞こえてよ」

「嘘! 楓ちゃん泣かなくってよ、今日は」

「チョコレートばっかりたべるから、今に歯なしになるんだろう」

「ううん、一本とるだけ」

気の利いた洋服を着せられた楓の手を引いているうちに、佳一は矢来の榎の家へ行って見てもいい気持ちになって来た。楓の母親が、佳一の姉と同窓であった。その関係で、彼は一種のファミリー・フレンドとなっているのであった。

資生堂で、女中が命じられた買物に入った。外の飾窓の前に立ちながら、佳一は、

「お母さまは?」

と楓にきいた。

「おうちにいらっしゃるの?」

「うん、いらっしゃるの」

「楓ちゃん、お家まで送ってって上げましょうね」

丁度彼等の目の前を、真っ赤な着物をきたサンドウィッチ・マンが通り過ぎた。