轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ひとつのあいじょう

一つの愛情

豊島 与志雄

「新小説」1949(昭和24)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,635 字 · 22 页

青空文庫

それが吉岡信一郎の心に一本の釘を刺した。彼はペンを執った。

ずいぶん長く間を置いて、手紙が来た。次々に来るようになった。

野辺に萩咲く秋になりました。

吉岡先生には御機嫌うるわしくいらせられましょうか、お伺い申上げます。

先頃は思い迫って、厚かましい無茶苦茶なお手紙を先生に差上げまして、どうなることかと恐ろしさに、じっと目をつぶっておりました。

それが、それが、ほんとうにどうしたことでございましょう。神様のようにおえらい先生が私のようなバカにお手紙を下さいました。

私は狐にでもばかされたように、ぽかんとして、何にもわけがわかりませぬ。私は夢を見ているのではないのでございましょうか。何にも信じられませぬ。夢ならば、いつ迄もいつ迄も死ぬるまで醒めないでほしゅうございます。

私は先生にどのように御礼のお言葉を申上げてよろしいか、その言葉がわからなくて、今日は今日はと思いながら、つい日を過してしまいました。何卒お許し下さいませ。

私はバカでございますから、どのように愚劣なことを申上げるかわかりませぬ。下らぬことばかり書いて先生にお手紙差上げましたなら、下らぬ奴と、きっとおさげすみになりましょう。