轻松读懂日语经典作品
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ひとつぼかん
一坪館
海野 十三
未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,902 字 · 56 页
前にまたがって運転をしているのは一六、七歳の少年で風よけ眼鏡をつけている。頬ぺたはまっ黒。少年の右腕は、三角巾でぐるぐるしばり、上に血がにじんでいる。
「矢口家のおかみさん。交番もこの通り焼けていますよ。お宅はこの横丁だが、入ってみますか」
少年は元気な声で、うしろをふりかえった。箱車の上に、蒲団を何枚も重ね、その上に防空頭巾をかぶって、箱にしがみついている老婦人があった。
「ああ、入ってみておくれな、源ちゃん。せっかくここまで来たんだもの、せめて焼灰でもみておかないと、わたしゃ御先祖さまに申しわけないからね」
「ええ、ようがす。おかみさん、上から電線がたれていますから、頭をさげて下さい」
「あいよ、わたしゃ大丈夫だよ。源ちゃん、お前気をおつけよ」
車は、交番跡から銀座横丁へすべりこんだ。そしてすぐ停った。そこはすぐ裏通りの四つ辻だった。
「おかみさん、そこがお宅のあとですよ」
「まあ、きれいさっぱり焼けたこと」
声は元気だったが、老婦人の小さな目にきらりと涙が光った。
一坪の土地
「おかみさん、お気の毒ですね」
源ちゃん――正しくいうと飛島源一は、箱車にうずくまっている老婦人に、おもいやりのあることばをかけた。