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ひとつぼかん

一坪館

海野 十三

未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,902 字 · 56 页

青空文庫

店の名前をつけなくちゃね」

と、犬山画伯は源一の店の前へやって来て、画看板を指でたたいた。なるほど、名前がほしい。

「なんとしますかね、犬山さん」

「さあね。すっきりした名がほしいね」

「あっ、そうだ。一坪花店というのはどうでしょう」

「なに、ヒトツボ花店というと……」

「ここの地所が、一坪の広さだから、それで一坪花店ですよ」

「な、なあるほど。よし、それがいいや」

犬山さんは、画筆をふるってこの画看板に「一坪花店」という名をかき入れた。

源一は、すっかりうれしくなって、あき箱に腰をかけ、うららかな陽をあびながら商売をつづけた。お客さまは、おもしろいほどつづき、店頭に人だかりがするほどになった。

お昼すこし前のこと、通りが急にさわがしくなった。それは例の三人組がやって来たのだ。干し芋とふかし芋とをならべると、三人がメガホンを使って、さわがしく呼びたてた。すると客は、みんな三人組の方へ吸いとられてしまった。三人組の声は、ますます調子にのっている。

源一は、また少しさびしくなった。

半年後

ここで話は、半年ばかり先へとぶ。

銀座も、バラック建ながらだいぶん復興した。