轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いちにちいっぴつ
一日一筆
岡本 綺堂
「木太刀」1911(明治44)年12月、1912(明治45)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,151 字 · 7 页
その当時に於ける彼の字書の信用は偉いものであった。
その字書は今も私の書斎の隅に押込まれている。今日ではあまり用をなさないので、私も殆ど忘れていたが、今や先生の訃音を聞くと同時に、俄にかの字書を思い出して、塵埃を掃いて出して見た。父は十年前に死んだ。先生も今や亡矣。その当時十五歳の少年は、思い出多きこの字書に対して、そぞろに我身の秋を覚えた。簾の外には梧の葉が散る。(明治四十四年九月)
三 品川の台場
陰った寒い日、私は高輪の海岸に立って、灰色の空と真黒の海を眺めた。明治座一月興行の二番目を目下起稿中で、その第三幕目に高輪海岸の場がある。今初めてお目にかかる景色でもないが、とにかくに筆を執るに当って、その実地を一度見たいというような考えで、わざわざここまで足を運んだのである。
海岸には人家が連ってしまったので、眺望が自由でない。かつは風が甚だしく寒いので、更に品川の町に入り、海寄りの小料理屋へ上って、午餐を喫いながら硝子戸越しに海を見た。暗い空、濁った海。雲は低く、浪は高い。かの「お台場」は、泛ぶが如くに横わっている。今更ではないが、これが江戸の遺物かと思うと、私は何とはなしに悲しくなった。