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いっぽんのぎんのはり

一本の銀の針

小川 未明

「少年倶楽部」1927(昭和2)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,687 字 · 10 页

青空文庫

沈めてしまおうと思うんですが、私たちの力ばかりではだめですから、ひとつ助けてください。」と頼みました。

風は、そういって頼まれると、いやだとはいえなかった。それに、自分がひとあばれしてみたいと思っていたやさきでありましたから、

「よろしい、大いにあばれてみましょう!」と、ただちに受け合うと、もう、高く怒り声をたて、白い帆を張った小船に向かってぶつかりました。小船は、木の葉のように波の上でほんろうされていました。

若者は、おじいさんもかつて、こうしためにあって、それに戦ってきたことを思いました。またお父さんは、やはりこんなめにあって、船がこわれて沈んでしまったのであろうと考えました。彼は、いまこそ自分の力を試すときだと思って、力いっぱい風と波とに戦ったのであります。

しかし、風の助けを得て、波はますます高くなりました。そして、白い帆の上を越すようになりました。

若者は、せっかくここまできながら、望みの島に着くこともできず、空しく海底のもくずになってしまうのかと残念がりました。また岩の上に降りていたたくさんの白い鳥は、波に足場をさらわれてしまって、あらしの叫ぶ空の中で、しきりに悲しんで鳴いていました。