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いっせんどうか
一銭銅貨
小川 未明
「週刊朝日 23巻17号」1933(昭和8)年4月2日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,098 字 · 5 页
「いろいろの人の手に渡ってきたんだね。」
「それは、そうよ。英ちゃんは、どんな人の手に、このおあしが渡ってきたと思うの。」
「大人や、子供や、金持ちや、貧乏人……。」
「もっと、いってごらんなさい。」
「船にも乗ったろうし、汽車にも乗ったろうし、新聞売りの手にも渡ったろうし、バッチンの穴の中へも入ったろうし、紙芝居のおじさんの手にも、そのほか考えたら、まだいろいろあるだろう。」
「だけど、海や、河の中に沈んだり、火の中へはいって、焼けてしまったら、もうこうして、このお金はなかったんですよ。」と、お姉さんは、おっしゃいました。それに、ちがいないと、英ちゃんは、思ったが、
「畳の間や、火鉢の灰の中に、落ちたことはあったかもしれないよ。」といいました。
「英ちゃんは、このお金をつかわないつもり。」と、姉さんは、おききになりました。
「僕、大事にして、しまっておくのだ。」
英ちゃんは、財布をばたばたやりながら、あちらへいってしまいました。
その晩、英ちゃんは、財布をまくらもとに置いて、寝たら、夢を見ました。
「坊ちゃん、私たちも、人間と同じように、一代のうちに、悲しいこともあれば、うれしいこともあります。