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みっつの「おんなだいがく」
三つの「女大学」
宮本 百合子
「婦人公論」1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,822 字 · 14 页
と読み下して、格別、自分たちがそういう徳川時代の本の名にそんなに馴らされていることに、新しいおどろきの心を動かされている様子もない。
私は自分たち女の生活の中にある伝統の力の強さを感じ直させられるような感じがした。そのようにして、大お祖母さんの時代からすらりと「おんなだいがく」と読みならわしてきている本の内容を、おそらく今日こまかに知っているひともないであろう。だが「女大学」の名は決して死んでいまい。何か生きて日本の女の生活のなかに今日も一縷のつながりをもってつたわっている。そのことは感じられるのではないだろうか。
貝原益軒が、「女大学」と呼ばれて徳川時代ずっと女の道徳の標準となった本をかいたのは宝永七年というから、十八世紀の初頭の頃のことである。八十五歳という長寿を保ったこの漢学者の生涯の時期は、日本では、有名な元禄時代の商人興隆時代、文化の華やかな開花の時代、文学の方面では芭蕉、西鶴、近松門左衛門などがさかんな活動をとげた時代と、流れを一つにしている。経済の中心が町人の階級にうつって、これまでは武家の掟で沈黙させられていた人間の種々さまざまの人情が、自然な流露を求めてあらゆる方面に動いた。