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みっつのひふん
三つの悲憤
豊島 与志雄
――近代伝説――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,748 字 · 18 页
二人の友人の間には何か秘密な了解があるようでした。
食卓には、田舎で出来る限りの料理が、次々に持出されました。犢の肉や臓物、豚の肉、まるのままの鶏、湖水のいろいろな魚や蝦、葱や大蒜や茴香、栗や筍、それからまた、百年もたったという老酒の甕も取出されていました。
ところが、料理が食べ荒され、酒が汲み交されるにつれて、賑かになるべき一座の空気は、却って沈んでゆくばかりでした。酔った范志清の高笑いが、へんに浮き上って耳につくようになりました。
阮東は、側に坐ってる父親に、声をひそめて尋ねました。
「匪賊の要求は、いかほどですか。」
「明晩までに八千金というのだ。」と平然たる調子でした。
「それだけの金が、うちにありますか。」
「この前やられたのでね、半分もあるまい。」
「では、どうなさるのですか。」
「どうにか、なるようになるだろう。家の者は皆、蔵の奥に隠れることになっている。わしは、人質になるかも知れない。」
「それでよいのですか。」
「よいもわるいもないのだ。そのため、今晩ゆっくり、御馳走を食べることにした。お前が帰って来たので丁度よかった。ただ残念だが、お前たちは、明日の朝出かけなさい。