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さんのじりょこうかい

三の字旅行会

大阪 圭吉

「新青年」1939(昭和14)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,658 字 · 19 页

青空文庫

或る日のこと。赤帽溜で昼飯を食べていた伝さんのところへ、降車口の改札係の宇利氏が、ひょっこりやって来て、いきなり云った。

「伝さん。お前さんは赤帽の親分だから、知ってるかも知れないが、毎日三時の汽車で一人ずつやって来て、いつも同じ男に出迎えられて行く女のお客さん達があるようだが、知ってるかい?」

「ええ、知ってます」

「どうだい、何かおかしなところがあるとは思わないかね?」

そこで伝さんは弁当を置くと、口の中のものをゴクゴク呑み込んで、やおら向き直り、

「大有りですとも。三の字旅行会の因縁咄という奴で……。知っているのはこのわしだけ。しかも口止めされているんですが、宇利さんになら、こっそりお話してもよござんしょう」

もう伝さんは、そろそろ心中の得意を、誰かに聞かせてやりたく思っていた矢先だったので、宇利氏の突然の質問に、わけもなく調子込んで、先日案内人から聞かされた話を、残らず得意になって喋ってしまった。すると聞き終った宇利氏は、ニッコリ笑いながら立上って、

「有難う。ところで、伝さん。折入って頼みたいのだが、今日の三時に、改札の僕の側へ立っていて貰えまいか。