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さんのじりょこうかい

三の字旅行会

大阪 圭吉

「新青年」1939(昭和14)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,658 字 · 19 页

青空文庫

その男は、成る程人の好さそうな顔をしてはいたが、余り風采の立派な男ではなかった。いつでも薄穢れのした洋服を着て、精々なにかの外交員くらいにしか見えなかった。毎日三時少し前になると、入場券を帽子のリボンの間に挾んで、ひょっこりプラット・ホームへ現れ、ほかの出迎人の中へ混って、汽車の着くのを待っているのであった。汽車が着くと、男は必らず三等車の三輛目の車へはいって行って、やがて、例の奇妙な婦人客のお供をして降りて来るのであるし、そのお客が男を従えて降りて来る頃には、もう伝さんは自分のお客のことで一生懸命になっているので、その顔を見覚えることなぞ到底出来よう筈もないのであるが、出迎えの男のほうは、なにしろ殆んど毎日のことであるので、いつの間にか顔も見覚えていたのであった。

二

最初のうち伝さんは、その出迎男を、何処かインチキなホテルの客引かなんかであろうと考えた。そして、五月蠅い商売敵だと思った。しかし、だんだん日数が重なるにつれて、どうも只の客引にしては少し腕がよすぎると感づき、つづいて手荷物の三の字と、三時の三等車の三輛目に気がついて、どうやらこれは只の客引なぞではなく、何か曰くのある団体の、一種の案内人――といったようなものではあるまいかと、考えなおすようになったのであった。