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さんりょうせいべえとめいばあさづき
三両清兵衛と名馬朝月
安藤 盛
「少年倶楽部」講談社、1931(昭和6)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,144 字 · 17 页
「朝月だ」
「清兵衛をくわえているぞ」
「おい、しっかりしろ、清兵衛」
城兵たちは、朝月の口から清兵衛を受け取って、かいほうした。一方では血にまみれた朝月のからだを、ふきとってやる者もあった。朝月は五ヵ所ばかり傷をうけていたが、ただ、清兵衛ばかり気づかいらしく、じっと見ていた。
「う、うーむ」
と、清兵衛は、やがて息をふき返したが、まだ、目はかすんでいたので、そこに朝月のいるのが見えなかった。
「おのおの、かたじけない――だが、朝……朝月はどうなったろう、朝月は――」
「無事だ、ここにいる」
城兵たちは、朝月をそこへひきよせていった。
「おお、朝月」
清兵衛は起きようとすると、朝月は前肢を折って、近々と顔をおしつけるようにした。清兵衛は、その首にとりすがった。この光景を見た城兵たちは、胸をしめつけられて声もなかった。この朝月が、主人清兵衛をくわえて帰ったことをきいた宍戸備前守は、そこへあらわれて、
「朝月は稀代の名馬だ。よくぞ働いてくれた」
と、たいせつな糒をひとにぎり、朝月の口へ入れてやった。ところへ、清兵衛の討ち取った、明兵の馬と着ていた鎧をかついで、味方は引きあげてきた。