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さんりょうせいべえとめいばあさづき

三両清兵衛と名馬朝月

安藤 盛

「少年倶楽部」講談社、1931(昭和6)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,144 字 · 17 页

青空文庫

清兵衛は、そのはなづらをなでていった。うまやの外の広場には、下弦の月が雪を銀に照らしていた。そこにあったむしろを背へかけてやろうとすると、朝月はそれをはね落として、鞍をぐいぐいとひいた。なにか事変の起こるのを感じたらしい様子である。

「おお、そうか、なにか貴様は感じたのだなア」

清兵衛が、朝月に鞍をつけると、静かになったので、

「ははあ、こりゃ、明兵が夜討ちをかけるのを、こいつ、さとったのだな、りこうなやつだ。よし、殿に申しあげよう」

と気がついて、清兵衛は、あたふたと、備前守の寝所の外の戸のところへ立って、

「川音清兵衛、殿にまで申しあげます。拙者の乗馬朝月が、こよい異様にさわぎまして、鞍をかみます。そこで、鞍をつけてやりますと、静かにあいなりました。察するに、なにか異変のあるしらせかとぞんじます」

と、どなった。

「よくぞ知らせた。たったいま軍奉行より、明軍は、すでに三里さきまでおし寄せてまいった、防戦のしたくせよ、と通知がまいったところであった。それを早くもさとったとは、さすがに三両で買った名馬、あっぱれ物の役に立つぞ。清兵衛、そちは急ぎ陣中に防戦のしたくいたせと、どなって歩け」