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さんにんのそうせいじ
三人の双生児
海野 十三
「新青年」1934(昭和9)年9、10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页
それからこっち一週間あまり経ち、真一はずっと元気づいた。妾の見立てでは、この「海盤車娘」はどっちかというと空腹で参っていたといった方が当っていたように思う。この邸でも、男ぎれというものが全くないので、妾も不用心だと思っていたところであるし、かたがた真一を邸内にそのままブラブラさせて置いたのが、逸早く速水女史の眼に止ったというわけである。妾はそのいきさつを手短に女史に語って聞かせた。
「まあそうなんでございますか」
と女史はいったがそこで一段と眉を顰めて、
「でもあの安宅さんとやらはどうも人相がよくございませんわ。お気をおつけ遊ばせ。これはあたくしの経験から申すことでございますよ」
女史はそういい置いて、なお心配そうに妾の顔をふりかえりながら帰っていった。
それから三日間というものは、妾の邸のなかは主賓の静枝と、飛び入りの安宅真一とを加えてたいへん朗かな生活を送った。真一は別人のように元気に見えた。しかし彼の青白いねっとりした皮膚や、怪しい光のある眼つきなどは別に消散する様子もなく、どっちかといえば更に一層ピチピチした爬虫類になったような気がするほどであった。