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さんにんのそうせいじ

三人の双生児

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年9、10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页

青空文庫

「キヨ。大変なことになったから、ちょっと、来ておくれ……」

というとキヨは縫物を抛りだして、

「えッ、大変でございますって……。ま、何が大変なのでございますか……」

妾は手短に、いま真一が離座敷で死んでいることを述べ、医者を迎えるまでに片づけておきたいものがあるからちょっと手をお貸しといってキヨを引張っていった。

「キヨ、いいかい。知れるとうるさいから此室からトランクだのを搬んだことは、誰にも云っちゃいけないよ。いいかい」

と妾は念入りな注意をすることを忘れなかった。キヨは黙って頭を振って同意を示すだけでいつものようにハッキリと返事をしなかった。どうやら真一ののけぞった屍体を見てから、すっかり恐怖に囚われてしまったものらしい。

丁度そのときのことであった。ジジーンと、突然玄関のベルが鳴った。折が折とて妾は胸を衝れたようにハッとし、持ちあげていた荷物をドスンと廊下へ落してしまった。

「呀ッ。キヨ、入れちゃあいけないよ。入れちゃあいけないよ……」

誰だろう?

警官だろうか。妾の胸は早鐘のように躍った。

ジジーン。ベルは再びけたたましく鳴った――もうお仕舞いだと思った。