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さんにんのひゃくしょう
三人の百姓
秋田 雨雀
「婦人公論」1920(大正9)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,876 字 · 12 页
すると代官様と家来たちはちゃんと室の外までお出迎えして、朝太郎を床の間の前に坐らせて、丁寧にお辞儀をしました。太郎右衛門は、庄屋から大体の話はきいて来たようなもののこの有様を見て、吃驚してしまいました。朝太郎は何も解らないので、皆なの顔をきょときょとと見廻わしているばかりでした。
その日の夕方、日の陰る頃を見計って朝太郎の吉松殿は、牡丹に丸の定紋のついた、立派な駕籠に乗せられて、城下の方へつれて行かれました。そして、その代りに莫大な金が太郎右衛門夫婦に残されました。
「何んてお目出たい話だ。お前のとこの朝太郎が殿様になるんじゃないか。」
と庄屋の長左衛門が、駕籠の見えなくなった時、太郎右衛門に言いますと、太郎右衛門は眼に涙を一杯溜て、
「何が目出たかべい……庄屋様、後生だわで、殿様がいやになったらいつでも遠慮なく家さ戻って来るように言ってやってくれべい!」
と言って涙を留度なく流しました。