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さんにんのひゃくしょう

三人の百姓

秋田 雨雀

「婦人公論」1920(大正9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,876 字 · 12 页

青空文庫

「ゆえありて、おとこのこをすつ、なさけあるひとのふところによくそだて。よばぬうちに、なのりいづるな、ときくれば、はるかぜふかん。」

この平仮名を読むために、夫婦は一晩費してしまいました。太郎右衛門が読んだ時と、お神さんの読んだ時と文句がちがうので大変に困りました。

「何しろ、拾った人に、親切にしてくれろってことだべい。」

と太郎右衛門が言うと、お神さんも、

「そんだ、そんだ。」

と同意を表しました。

二人はその晩、拾った赤児を替り番子に抱いて寝ました。赤児の柔かい肌が触れると、二人とも何んとも言い表わしがたい快感を感じました。夜になってから、赤児が二度ほど泣きましたが、二人はその度に、甲斐甲斐しく起上って、あやしてやったり、「おしっこ」をさせてやったりしたので、朝方になって、大変よく眠りました。お神さんが早く起きて、雨戸を明けると、そこから明るい太陽が遠慮なく射し込んで来ました。お神さんは、急に自分が偉い人間にでもなったような自慢らしい気持がするので、不思議に思われる位でした。

太郎右衛門も太郎右衛門で、自分に抱かれて眠っている子供の顔を見ていると、その子がほんとうに自分の生んだ子供のような気がするのでした。