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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
「ぼく……ぼく」
と正吉はいいよどんでいたが、やがて思い切っていった。
「ぼく、急にぼくのお母さんに会いたくなりました。ぼくがあの冷凍球の中にはいるとき、ぼくのお母さんは五十歳でした。ああ、それから三十年たってしまったのです。するとお母さんは今年八十歳になったはず。お母さんは日頃から弱かったんです。お母さんは、とても、今まで長生きしているはずはない。ぼく……ぼく……もうお母さんに会えないだろうな」
正吉少年のこのなげきは、たいへん気の毒であった。カニザワ氏とサクラ女史とカンノ博士の三人は、ひたいをあつめて何か相談していたが、やがてカニザワ区長が正吉にいった。
「もしもし、正吉君。われわれに、すこし心あたりがあるんです。うまくいくと、君のお母さんに会えるかもしれませんよ」
「えっ、ほんとですか。しかし母は、もう死んでいますよ」
「いや、そのことはやがて分りましょう。これから町を見物しながら、そちらへご案内してみましょう」
人工心臓
正吉は、区長たちからなぐさめられて、すこし元気をとりもどした。
町を案内してもらったが、なるほどじつににぎやかであり、また清潔であった。