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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
うれしいことですね。お父さんなんか、昭和二十年に死んじまって、たいへん損をしたことになりますね」
「ほんとにおしいことをしました。お父さまももう十五、六年生きておいでになったら、わたしと同じように、ずいぶん長生きの出来る組へはいれるのにねえ。そうすればお母さんは、今よりももっと幸福なんだけれど……」
正吉の母は、早く亡くなった正吉の父親のことをしのんで、そっと涙をふいた。
そのときだった。りっぱなひげをはやした三十あまりになる紳士と、それよりすこし下かと思われる婦人とが、かけこんで来た。
「あ、お母さん。ここへ、兄さんが訪ねて来てくれたんですって」
「あたしの兄さんは、どこにいらっしゃるの」
正吉はその話を聞いて、目をぱちくり。
「おお、お前たちの兄さんはそこにいますよ。ほら、そのかわいい坊やがそうですよ」
母親は正吉を指した。
「えっ。この少年が、僕の兄さんですか。ちょっとへんな工合だなあ」
「まあ、ほんとうだわ。写真そっくりですわ。でもあたしの兄さんがこんなにかわいい坊やでは、兄さんとおよびするのもへんですわね」
「正吉や。こっちはお前の弟の仁吉です。またそのとなりはお前の妹のマリ子ですよ」